はじめに(概要)
JPEGやPNGといった「本来はWebやモニター表示が得意な画像」を、印刷入稿の仕様に合わせて高品質に仕上げるための工夫や編集テクニックをご紹介します。
単に「モード変換する」だけでなく、以下のひと手間を加えることで、トラブル回避とクオリティアップが可能になります。
ご利用の環境やソフトウェアによっては、一部ご対応いただけない場合がございます。
「解像度不足」をカバーする工夫(荒さを隠す・直す)
Web素材など、どうしても解像度が足りない(小さい)画像を大きく使いたい場合のテクニックです。
◼︎ AIによる「スーパー解像度」活用 Photoshopの**「スーパーズーム(ニューラルフィルター)」やLightroomの「強化」**機能、あるいはTopaz Gigapixelなどの専用ツールを使います。単純な拡大と異なり、AIがディテールを補完するため、2倍〜4倍程度なら印刷に耐えうる画質まで引き上げることが可能です。
◼︎ 「画像トレース」でベクター化する(ロゴ・イラスト向け) PNGのロゴやアイコン画像の場合、Illustratorの**「画像トレース」**機能を使ってパス(ベクターデータ)に変換してしまいます。こうすれば、どれだけ拡大してもジャギー(ギザギザ)は発生せず、色変更も容易になります。
◼︎ あえて「網点(ハーフトーン)」加工にする 画質の荒さを逆手に取り、Photoshopで「カラーハーフトーン」などのフィルターをかけ、新聞やアメコミのようなドット柄のデザインにしてしまいます。これなら「元々粗い画像」ではなく「そういうデザイン処理」として成立し、解像度の低さが気にならなくなります。
「色くすみ」を防ぐCMYK変換テクニック
◼︎ RGB(JPEG/PNG)をCMYKに自動変換しただけでは、全体的にグレーっぽく沈んでしまいます。これを補正する工夫です。
- 変換後の「トーンカーブ」補正 CMYK変換直後に、Photoshopでトーンカーブを使い、中間色(ミッドトーン)を少し明るくし、再度彩度をわずかに上げます。これで「沈んだ」印象を軽減できます。
- 「リッチブラック」と「K100%」の使い分け
- 写真の影など: CMYKすべてが混ざった「リッチブラック」で深みを出します。
- 文字や細い線の黒: RGBの黒(R0 G0 B0)をCMYK変換すると4色が混ざった黒になりますが、これは印刷ズレ(版ズレ)の原因になります。黒い文字部分は、選択範囲を指定して**「K(ブラック)100%のみ」**に置き換える編集を行うと、印刷文字がキリッと仕上がります。
- JPEGやPNGを直接リンク配置せず、「PSD」を経由する
- Photoshopで開く: JPEG/PNGをPhotoshopで開く。
- 解像度・色の確認: 画像解像度を350dpiに変更し、カラーモードをCMYKにする。
- PSD保存: 別名保存で「Photoshop形式(.psd)」として保存する。
- 配置: IllustratorやInDesignには、このPSDデータを配置する。
「透明・切り抜き」の事故を防ぐ安全策
◼︎ PNGの透明背景は、印刷の出力機(RIP)によってはエラーの原因になることがあります。
「画像を統合」して入稿する デザインが完成した段階で、レイアウトソフト(InDesignやIllustrator)上で透明部分を含んだ画像を配置したままにするのではなく、背景と馴染ませた状態で**「画像を統合(フラット化)」**して一枚の画像にしてからPDF化すると、透明効果によるトラブル(白い線が出る、影が消えるなど)を確実に防げます。
「フリンジ削除」を行う 白背景で使われていた画像を切り抜いたPNGは、エッジにうっすら「白いゴミ(フリンジ)」が残っていることが多いです。Photoshopの「レイヤー」メニューにある**「マッティング」→「フリンジ削除」**を行うと、エッジの白いノイズが消え、濃い色の背景に置いても馴染みが良くなります。
推奨ワークフロー(PSDラッピング)
最も安全で、後から修正もしやすいワークフローは以下の通りです。
メリット:
JPEGの再保存による劣化を防げる。
PNGの透明情報を正しく保持できる。
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